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翻訳をされた方が同じ市内在住の、こんなに近くにお住まいの方だったとは。

僕がこの本に出合えたのは割と最近のことです。 自分には到底近づくことが適わない書物だと思っていたからです。


知り合いになったばかりのイタリア人の若者と、帰りの西武新宿線でおしゃべりしたことを今でも覚えています。
お互いに好きな本の話になって、彼は「オーエの文学は素晴らしい」と言う。僕は「大江健三郎は僕には難しくてわからないや」と返す。そしたら彼は「漢字が難しいから読めないの?」。
「僕はカルヴィーノの見えない都市が本当に好きなんだ」。「カルヴィーノは難しいよ」。「翻訳のお陰で、僕は見えない都市を読めていると思う。翻訳家のお陰で僕は内容を理解できているんだと思う」。「確かにそうだね」。

たまたま帰りの方向が同じだっただけの、どちらかが先に電車を降りるまでの会話だったけれど、海外文学を読むときにあの車両の雰囲気をふわっと思い出します。

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7月15日の夕方

この日は講義で自分の作品のことを話しました。様々な専門分野の先生方がオムニバス形式で講義を行う基礎教養科目で、この日が自分の担当回でした。
自分の絵のことを話すのは別格に難しいし恥ずかしいです。いつもぎりぎりまで講義原稿を書き直してしまって、結局のところ、いつもとは違うテンションでチャイムが鳴るのを待つ自分がいます。
PCのカメラに向かっていて、話す内容やリテラシーの想定は適切だっただろうか。1年生向けだからといって、話をかみ砕きすぎて逆に失礼にはならないだろうか。履修者の回線落ちを意識しすぎて単調になっていやしまいか。

講義が終わった後はいつも自己嫌悪が増幅して、しばらくの間しゅんとするのですが、この日は救われました。
いつもお昼をご一緒させてもらっている、学科の違う先生方とばったり会えて、夕食の席にもお邪魔させてもらうことができました。


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先日の空模様から

絵具のフタロシアニンブルーそのままのような空色に、ひとすじの灰色の雨雲。
刷毛で垂らし込んだような筋が印象的でした。




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透明水彩でグレーを出す練習。
いくつかの習作をして片付けたときに、ドライヤー代わりの布団乾燥機のノズルが同じ色味であることに気が付いたところ。



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挿画の一頁。
基準となるグレーが定まって、ようやく少しずつ描き進められるようになりました。

まだまだ先は長いけど。




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2月6日。岡安圭子さんの朗読会にて

今年の朗読会は定員を少なく、そして岡安さんが座席の後方から語り掛けてくださるかたちで行われました。私たちはいわば背中で、岡安さんの朗読を聴いています。
蜜蠟キャンドルの明かりだけで照らされた会場で「銀河鉄道の夜」のいくつかの断片を聴いていると、これはおそらくは小さかった時の、寝る前の読み聞かせに近い感覚かもしれないと思いました。
年に一度、この場で会える方々とのつかの間のおしゃべりも、貴重なひと時でした。



Bricolage

挿画のための細かい仕事が続いているので、描くスピードが落ちてきているのが自分でもわかります。
そういう時は身の回りのものをちょっと手直ししたりします。

描き損じの木枠を組み直しています。だいぶ年月の経った木枠ですが、しっかりと乾燥しているし、いい杉材です。僕は寸法の違う木枠をあちこちから組み合わせて使うので、角の組み合わせが良くない場合があります。そういう時は隙間を端材で埋めたり、出っ張りはカンナで削ったりします。
釘穴の跡は爪楊枝をトンカチで打ち込んでいきます。(釘穴が残っていると、カンヴァスを貼りなおすときにすこっ、となってしまうんです。)まず爪楊枝の頭を折ってから、とんとん、ポキッ。とんとん、ポキッ…、とリズムよく繰り返します。短くなったら新しい爪楊枝からもう一度。

これが結構気分転換になってくれます。
このあと、木枠にアンティークリネンを使ったカンヴァスを貼ります。




フーカスグリーンとペインズグレー

「この2色があれば、大抵のもんは描けるんだ。」

学生時代の恩師、松本英一郎先生の言葉です。

大学の倉庫にずっと遺されていた、デッドストックの高級水彩筆をたくさん持ち帰らせていただいたことがきっかけとなって、学生の頃に使っていた透明水彩絵具を引っ張り出して、おそるおそる手を動かしています。
ハーネミューレを銅版画のやりかたと同じように水に浸して、吸い取り紙で吸わせた後、水張りをします。その半濡れの状態で色をのせてみます。
ちょうどアトリエの大家さんから頂いていた、ゆずとリンゴがモチーフです。

松本先生に言われそうな感じで言葉にすると、まぁ、へったくそなもんです。