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僕は、制作途中の絵を斜めから眺める時間をつくります。
美術館で気になる作品に出会うのは、ちょっと離れたところからです。
ふと視界に入ってきたその作品に、自分の足がその作品の正面へと向かわせる衝動のようなものが、その斜め読みのような瞬間に隠れているように感じています。

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自分の作品のことを話しました。
1年生へ向けたオムニバス形式の概論講義で、そのうちの2回分を担当させていただきました。
僕は週に幾度か教壇には立っているのですが、自分の作品について語るとなると、話は別です。講義原稿を周到に準備したつもりでも、聴講生を含めると150名を超える学生の前では、もう、しどろもどろです。
学生が退出した後の教室を眺めるのが、じつはちょっと好きです。
荘厳な感じがします。
桜の美しい名の大学にて。

銅版画工房にて

前回の試し刷りと手直しのあと、本刷りを行いました。
この版には雁皮刷りが合う、と直感するようになったのは、進歩なのかな。
雁皮刷りには少し集中力が必要です。数枚刷ると、もうくたくたです。
工房の先生からも「疲れた顔してますね」と声を掛けられて、苦笑い。
お茶をいただいて、ひと休みです。

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カーリング女子の3位決定戦をラジオで聴きながら、手を動かしていました。
銅版にいまいちど腐食をかけ終えて、明日は工房へ試し刷りに行きます。
地元のスポーツクラブのプールで泳ぐようになって20年近くになります。今日は気がついたら泳いでいるのは僕ひとりだけ。ときどきそういう時があります。プールの設備の機械音だけが、ごーと聞こえています。
今日は早めに行ったので、閉館までには時間の余裕がありました。サウナに入って身体を温めてから、いつもより入念にストレッチをして、少し長めに泳ぎました。

岡安さんの朗読会へ伺う

朗読家の岡安圭子さんとは、森岡書店での個展でカルヴィーノの朗読をして頂いたご縁から、ときどき朗読会へ伺って聴かせていただいています。
蜜蝋キャンドルの灯りだけで照らされる会場で、岡安さんの朗読が始まります。彼女の静かな声に耳を傾けていると、デフォルトの静寂、とでもいえばよいでしょうか、お話を聞いているような、聞いていないような、そんな感覚になります。空調の音や、外から聞こえてくる、おそらくスーパーカブのエンジン音などのさまざまが、雑音としてではなく感じ取れるようになっていきます。その音音を感じ入るひとときこそが、たいへん贅沢な時間なのだと思います。
僕は気づかなかったけれど、朗読中に涙を流している方々もいらしたという。
今回は宮沢賢治の『春と修羅』を中心に、幾つかの詩とお話しの抜粋で構成されていました。朗読には『永訣の朝』が入っています。僕の後ろに座っていたのは朗読会を通じて知り合いになった女性。僕よりずっと年下の、どんな人ともすっと打ち解けられる空気を持った、朗らかで素敵な方です。その彼女が数ヶ月前にお兄様を亡くされていることを僕は喪中葉書で知っています。彼女と年に数回しか会うことのない僕は、この日も、たわいもないお喋りをして、また今度、と手を振りました。