講演のために来日されているマリオさんご夫婦と都内をまわりました。
あいにくの雨でしたが、楽しんでくださったようです。
片言のイタリア語で案内していると、日本語もカタコトになっていきます。
行き慣れたはずの場所なのに、方向感覚を失って右往左往です。
写真はご夫人のルイーザさん撮影。

2015年から通っていた、銅版画工房に行く最後の日です。
この日は工房にある様々な種類の黒インクを分けていただいて、テストピースを刷りました。
性格の違うインクを混ぜて使用することなど、先生からアドバイスいただきながらの作業です。
CREA銅版画工房の高尾先生には大変お世話になりました。
(ありがとうございました!)

版画用品店の店主から、このプレス機の来歴を教えてもらっています。
この型はカタログには記載されていない特寸のプレス機です。
ほどなくして、その作家さんが海外に滞在されることとなり、このプレス機を手放すことになったそうです。そのため、あまり使われることが無かったようです。
職人さんが整備・調整くださって、この日、4人がかりでプレス機を届けてくださいました。
フェルトも残っています。この裏には前所有者のサインが残されています。

銅板用の切断機を手に入れる

まもなく僕のアトリエに銅版プレス機が届きます。
都内にある版画用品の専門店に、中古プレス機の斡旋をしてくださるお店があるのですが、私にその順番が回ってきました。型番を教えてもらって検討して、そのプレス機を預からせていただくことにしました。
これまでは銅版画の工房でずっとお世話になっていたので、さまざまな道具の準備も必要になります。銅板をカットする切断機も探していたのですが、工房と同じものを僕のアトリエに設置することは難しく、ハンドシャーと呼ばれる切断機を探すことにしました。
幸い、自宅からそう遠くない中古工具店に在庫があることを知り、先日持ち帰ってきました。
ありあわせの合板で台座を作り、描き損じのカンヴァスの木枠で銅板を送る台も作りました。持ち手はW3/8のボルトと蝶ナットを新たに買い求めて、使用後に外せるようにします。非常に切れ味が鋭いので、刃押さえと皮手袋も用意します。

納品に備えて、画面の保護ワニスの塗り替えを終えました。
油絵には完成直後に塗るニス(仮引きワニスといいます)と、完成後1年以上が経過して、絵具が完全に乾燥してから塗ることのできるニスがあります。納品先の環境を考慮して合成樹脂系のワニスを選択。ホワイトスピリットを少量加えて濃度を整え、平滑に仕上げます。
ふつうに飾っているのであれば、これで私たちが生きている間は大丈夫。ホコリなどは、やわらかい刷毛やクイックルワイパーみたいなもので軽く払えばOKです。
もしこの絵が残ってくれたら、次は修復家のどなたかが、このニスを塗り替えてくれるはずです。
この絵はもうすぐ、海を渡ることになると聞いています。

PHILIPPE WEISBECKER

フィリップ・ワイズベッカーの展覧会は、ほとんど観に行っていると思います。
自分も年齢を重ねた時、こんなふうに描けるようになりたいです。
僕は画集や図録をなるべく買わないようにしています。それは、実物を観たときの記憶を印刷物によって変えられたくないからですが、この作品集は作家とデザイナーとの信頼関係を感じ取ることができて、すぐに買おうと決めました。
素敵な造本の、きれいなグレーです。

僕は、制作途中の絵を斜めから眺める時間をつくります。
美術館で気になる作品に出会うのは、ちょっと離れたところからです。
ふと視界に入ってきたその作品に、自分の足がその作品の正面へと向かわせる衝動のようなものが、その斜め読みのような瞬間に隠れているように感じています。

自分の作品のことを話しました。
1年生へ向けたオムニバス形式の概論講義で、そのうちの2回分を担当させていただきました。
僕は週に幾度か教壇には立っているのですが、自分の作品について語るとなると、話は別です。講義原稿を周到に準備したつもりでも、聴講生を含めると150名を超える学生の前では、もう、しどろもどろです。
学生が退出した後の教室を眺めるのが、じつはちょっと好きです。
荘厳な感じがします。
桜の美しい名の大学にて。